×

【指導者の視点】浦和を天皇杯優勝に導いたリカルド監督の「選択肢を最小限に減らす守備」

天皇杯を掲げる浦和のリカルド・ロドリゲス監督。写真:徳原隆元/(C)Takamoto TOKUHARA

“早く”そして“強く”いくプレッシングが徹底、実現できたメカニズムを紐解く。

[天皇杯 決勝] 浦和 2–1 大分/2021年12月19日14:00/国立競技場

 天皇杯決勝、浦和レッズが掴んだ勝利の鍵に、リカルド・ロドリゲス監督の施した守備の構築と徹底が挙げられる。ディフェンス時は4-4-2になって、相手選手間の中間ポジションを意識しながら、危ないゾーンを塞ぎつつ、プレッシングを仕掛けていく。相手の選択肢を最小限に減らす、という守り方が徹底されていた。

 大分トリニータはボール保持時、小林裕紀、下田北斗の中盤真ん中の2人がボールに関わり、それに合わせて周りの選手もポジションを取り、ポゼッションしていく。そのように戦術が落とし込まれていた。大分の内容も1試合通じて、非常に良かったと言えた。

 その大分の攻撃に対し、25分の浦和の守備が良い例に挙げられる。

 相手のビルドアップ(センターバック+小林)に対し、全体をコンパクトにしながら、2トップ(キャスパー・ユンカー、江坂任)に加え、サイドハーフの関根貴大、小泉佳穂も、相手最終ラインの選手にプレッシャーをかけられる位置取りをしていたのだ。そうすることで相手のパスコース限定に成功していた。

 パスコースが限られれば次のプレーが予測できる。“早く”そして“強く”向かうプレッシングが実現、短時間の間に3度もインターセプトを結実させた。

 このシーンを取ってみても、浦和の守備時には「行ける」と察すれば“早く、強く”相手のボールを奪いにいくことが常に徹底されていた。

 良いポジショニングを取るだけで「良い守備」とは言えない。ボールを奪ってこそ、初めて守備の目的は達成される。こうしたディテールや優先順位の徹底は普段のトレーニングから意識して取り組んでいるからこそ、こうした大一番でもしっかり発揮されたのだろう。

 後半、大分が選手の配置(ダブルボランチ気味にして、サイドハーフが内側にポジションを取る)を修正。浦和は縦パスを通されることが増え、押し込まれた時間帯もあった。

 ただ、場所や状況によって、ボールを奪いにいくのか、あるいはゴール前のスペースを守るのか。そのあたりも整理されていて、危ないスペースに進入されるシーンは少なかった。

 最後の失点は反省材料になる。ただ、それ以外の多くの場面では、積み上げてきたもの、そしてこの試合に向けた対策がしっかり表現できていた。

 2022年のリカルド・ロドリゲス体制2年目、どんなチームになっていくのだろうか。非常に楽しみを抱かせてくれる、シーズン締めくくりの一戦となった。

【著者プロフィール】
佐川祐樹(さがわゆうき)/1992年4月25日生まれ。広島県出身。広島大学大学院時に指導者キャリアをスタート。広島皆実高校サッカー部コーチ、広島修道大学サッカー部監督を経て、2018〜2020シーズンの3年間、FC今治のU-14コーチを担当。元日本代表監督でFC今治オーナーの岡田武史氏から「OKADA Method」を学び、原理原則やプレーモデルを大切にする育成法を学ぶ。現在は、山口市役所で勤務しながら山口県のサッカーに携わっている。

【注目記事】
【浦和】フランス1部ナントがユンカーの獲得に動く。神戸、ジェノア、サンプドリアも過去に名乗り

【横浜FM】杉本健勇が退団へ、SNSでサポーターへ感謝を綴る。浦和から期限付き移籍、11試合・3ゴールを記録

【移籍 注目株】浦和の興梠慎三が札幌、山中亮輔がC大阪!? 京都が金子毅を狙う

[文:サカノワ編集グループ]

Ads

Ads