【指導者の視点】 冨安健洋が最高峰のレベルで貫く「優先順位」、マンチェスター・シティ戦の二つの場面で見せた対応力
アーセナルの冨安健洋(左)がマンチェスター・Cのスターリングと対峙!(Photo by Julian Finney/Getty Images)
スターリングと対峙しながら適時対応。「まず何を優先して守るべきか」
[プレミアリーグ 21節] アーセナル 1-2 マンチェスター・C/2022年1月1日/エミレーツ
イングランド・プレミアリーグで注目を集めたアーセナル対マンチェスター・シティの一戦、世界最高峰のリーグの首位を走るマン・Cに対し、アーセナルの日本代表DF冨安健洋は試合にこそ敗れたものの堂々たるプレーを見せた。具体的に際立っていたのが、危ないスペースをいち早く察知し、「まず何を優先して守るべきか」を瞬時に判断する力だった。
好プレーが多くあったなか、印象的だった二つのシーンを取り上げたい。
▽60分のポジショニング
アーセナルのガブリエウが退場して一人少なくなった直後のシーン。マン・Cはアーセナルの右サイドの裏のスペース(冨安、ベン・ホワイトの背後)を狙おうとしている。ラヒーム・スターリングとベルナルド・シウバのランニングにその狙いが現れていた。
そこでアイメリク・ラポルテがボールを持った時、まず冨安はスターリングに背後を取られないようにスペースをしっかりケアしている。
注目すべきはその後のプレーだ。
「ベルナルド・シウバ→ナタン・アケ」を経由してスターリングにボールが入る。冨安がマークについていたのはスターリングだったが、ベルナルド・シウバの背後を突く動きに素早く察知。そこで、スターリングにプレッシャーを行くのをやめた。
もしも本来の優先順位の上位であるスターリングへのマークを優先していれば、ベルナルド・シウバに簡単に深い位置に進入されていた。
ボールに直接触れていないが、「マーカー」と「危ないスペース」のどちらを守るべきか、それをしっかり判断できていたファインプレーだった。
▽80分のカバーリング
数的不利に立ったあと、アーセナルはシステムを1-5-3-1に変更。まず失点しない戦い方にシフトチェンジした。
80分34秒、マン・Cは相手を引き出すためライン間に立ったギュンドアンに縦パスを入れた。そこに食いついたのは5バックの右ストッパーのホワイトだった。
マン・Cの狙いに乗ってしまったと言えた。これでアーセナルのDF陣は対応が遅れ、決定機になるかと思われたが。が、ここでも冨安の判断力がチームを救う。
アケのペナルティエリア内へのパスに対し、スライディングでカバーをしてみせた。
この時の冨安のマークは左ウイングのスターリング。アケにボールが渡った時、スターリングに釣られすぎると、中央のスペースが守れなくなっていた。
しかし冨安は、ホワイトの“食いつき”により最終ラインにスペースができたこと、そのスペースがスターリングよりも危険だと察知し、アケがパスを出す直前にステップを踏み替え、中央を守ることを選択した。
正確な判断を早くできた、対応が遅れることなくインターセプトができた。
「まず何を優先して守るべきか」――。その原理原則が理解されているからこそできたプレーだった。
冨安は濃密な90分を通じ、判断の面、1体1の対応、ビルドアップなどを体で感じ、世界トップレベルの選手と対等に戦えることを証明してみせた。
【著者プロフィール】
佐川祐樹(さがわゆうき)
1992年4月25日生まれ。広島県出身。広島大学大学院時に指導者キャリアをスタート。広島皆実高校サッカー部コーチ、広島修道大学サッカー部監督を経て、2018〜2020シーズンの3年間、FC今治のU-14コーチを担当。元日本代表監督でFC今治オーナーの岡田武史さんから「OKADA Method」を学び、原理原則やプレーモデルを大切にする育成法を学ぶ。現在は、山口市役所で勤務しながら山口県のサッカーに携わっている。
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[文:サカノワ編集グループ]