【指導者の視点】ブラジル代表の華麗さを支える一流の献身。ミリトンやアウベスが見せた味方を助ける自然な振る舞い
2.守るべきものの理解、守備の個人戦術の高さ
もう一つは守備における個人戦術。1試合通じて一人ひとりの守備の理解の高さを感じた。一例が51分30秒、右SBの大ベテラン、ダニエル・アウベスのポジショニングだ。
逆サイドで田中碧がボールを持っている時、アウベスは自分のマークである南野拓実にボールが出てこないと判断し、一旦CBマルキーニョスをカバーできる、リスクのある中央まで絞った。
すると、田中から中央でパスを受けた遠藤が、さらに南野までサイドチェンジするボールの持ち方をした。その瞬間、アウベスはステップ、身体の向きを変えてすぐさま約2、3メートル、南野側にポジションを取り直した。
実際、遠藤から南野にパスが到達したが、最初のスタートが良かったため、自らの間合いで守備ができて、相手の自由を奪った。
さらにCBマルキーニョスは、南野にパスが入る瞬間、最初は背後にインナーラップした中山雄太について行こうとしていた。しかし南野のボールコントロールがゴールに向かず、ルーカス・パケタがカバーに来たのを認知すると、中山への対応ではなく、優先すべきゴール前へのポジショニングに切り替えている。
この一連の判断の切り替え、瞬間的な認知を正確に実行していた。
攻撃の華やかさが注目されるブラジルの選手たちだが、この二つのプレーのように、地味であるがチームを支えるプレーを自然と行い、より相手に対し優位に立ち、勝率を高めている。「守備の質が高く、それを上回るために攻撃が良くなり、攻撃が良くなるとそれを上回るために守備の質も増す」というサイクルが、練習中、そして試合中とでき上がっていると感じる。このサイクルはとても重要であり、日常から習慣にしていきたいところである。
【著者プロフィール】
佐川祐樹(さがわゆうき) 1992年4月25日生まれ。広島県出身。 広島大学大学院時に指導者キャリアをスタート。 広島皆実高校サッカー部コーチ、広島修道大学サッカー部監督を経て、2018〜2020シーズンの3年間、FC今治のU-14コーチを担当。元日本代表監督でFC今治オーナーの岡田武史氏から「OKADA Method」を学び、原理原則やプレーモデルを大切にする育成法を学ぶ。 現在は、山口市役所で勤務しながら山口県のサッカーに携わっている。
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