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【指導者の視点】クロアチア攻略法、岡田メソッドで解析。日本代表さあW杯ベスト16の壁を越えるぞ

日本代表が次はクロアチアに挑む! (Photo by Stu Forster/Getty Images)

「特長」と「弱点」は? モドリッチら中盤3枚の構成力は高く、守備も整理されている。一方、彼らが前目に出た時にチャンスあり。

[カタールW杯 ラウンド16] 日本代表 – クロアチア代表 /2022年12月5日18:00(日本時間6日0:00)/アル・ジャヌーブ・スタジアム

 カタール・ワールドカップ(W杯)グループEを1位で通過した日本代表が日本時間12月6日零時から、W杯初のベスト8進出を懸けて決勝トーナメント1回戦でクロアチア代表と対戦する。

 今回はグループステージ第3戦、スコアレスドローに終わったクロアチア対ベルギー代表戦(クロアチアは「引き分け」以上でベスト16に進出できる状況)をスカウティングし、クロアチアのストロングポイントとウィークポイントについてまとめたい。

◎ストロングポイント
1.中盤3枚の圧倒的なボールキープ力、判断力の高さ

 クロアチアが誇る中盤のタレント、ルカ・モドリッチ、マテオ・コバチッチ、マルセロ・ブロゾビッチは1試合を通して、ほぼボールロストしていない。加えて決してまずセーフティな選択を優先しているわけではなく、前を向ける時は前を向き、個々がボールを運び出してパスコースを作り、前進させてチームの推進力を生んでいる。

 また、それぞれに個性はあるものの、3人とも前線(トップ下、インサイドハーフ)、中盤の底(アンカーやボランチ)の役割もこなせて、縦横無尽にポジションチェンジし、相手のマークを絞らせずかく乱しながら、ゲームをコントロールしている。

 ベルギー戦でのクロアチアの攻撃は、ファイナルサードのサイドで数的優位を作る狙いを持ち、そこからクロスを仕掛ける展開が多かった。それを可能にしているのも中盤でボールキープできる3人がいるから。ベルギーは中盤中央に詰めなければならず、そのためサイドが手薄に。そこでクロアチアがより有効な攻撃を仕掛けるシチュエーションが生まれていた。

2.統制された守備ブロック

 クロアチアは4-1-4-1のシステムで守備を行い、誰がマークにつき、どのスペースを埋めるのか、非常に整理されている。中盤のポケットにベルギーの選手にフリーで走り込まれた場合、モドリッチ、コバチッチら中盤の選手がつき、状況に応じた対応も自然とできていた。

 ベルギー戦の後半は特にピンチを作られるシーン、押し込まれるシーンもあったが、組織的な守備により一番危険なセンターバック付近のエリアから人が釣り出されず、最後に体を張って凌げていた。センターバックのデヤン・ロブレン、ヨシュコ・バルディオルの能力も高い。

◎ウィークポイント
1.前がかりになった時に受けるロングカウンター

 クロアチアは13分、自陣でクロスのセカンドボールを拾われたあとベルギーにロングカウンターを発動させられ、ピンチを招いた。クロアチアの中盤3人が前目にポジショニングを取り、さらにサイドバックも高く位置を取っていた。この瞬間、センターバック2枚でしかリスク管理できていなかった。

 ロングカウンターに持ち込んだベルギーにパスをつながれ、前線3人により決定機を作られた。ただドリース・メルテンスのシュートは枠外に。

 つまり、クロアチアは「2対3」の状況を作り出されていたのだ。

 日本は、クロアチア相手にボールを保持される時間が長くなると予想される。耐える守備が求められるが、前線に前田大然、浅野拓磨とスピードあるタレントもいるだけに、ロングカウンターは改めて有効になるはずだ。

2.4-1-4-1の“弱点”アンカー脇を素早く使われた時の対応

 4-1-4-1のシステムはアンカー脇のスペースをいかに埋めるかが最大のテーマの一つ。クロアチアもそこに課題があり、60分、アンカー脇でケヴィン・デ・ブライネにパスを受けられた。そこからヤニック・カラスコのスルーパスを経て、ロメル・ルカクにシュートを打たれたが、ポストに当たって救われた。完全に崩された場面だった。

 ブロックを引いた時のクロアチアの守備は、ストロングポイントに挙げたように非常に手堅い。

 しかしこのシーンのように、サイドチェンジで揺さぶられスライドが間に合わない時(ここではコバチッチのスライドが間に合わなかった)に素早くアンカー脇を使われ、決定機を作られた。

 他にも数回、アンカー脇を突けそうな場面があった。日本がボールキープした時、そこを突けるかどうか、そこからどのように展開するのか。その意識を共有できるかが、一つ鍵になるのではないかと思う。

 ドイツとスペインに勝利したとはいえ、前回大会準優勝のクロアチアは非常に強敵である。日本は我慢強くハードワークを続けて、交代選手を含め90分、もしくは延長120分までフルに活用すれば勝機を見出せるはず。ベスト16の壁を越えらるように応援したい!

【著者プロフィール】
佐川祐樹(さがわゆうき)
1992年4月25日生まれ。広島県出身。広島大学大学院時に指導者キャリアをスタート。広島皆実高校サッカー部コーチ、広島修道大学サッカー部監督を経て、2018〜2020シーズンの3年間、FC今治のU-14コーチを担当。元日本代表監督でFC今治オーナーの岡田武史さんから「OKADA Method」を学び、原理原則やプレーモデルを大切にする育成法を学ぶ。現在は、山口市役所で勤務しながら山口県のサッカーに携わっている。

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