【熊本】J1昇格へあと数センチ…ATポスト直撃弾の平川怜「打った瞬間、ポストに当たっていた」、それでも「また、やるしかない」とすぐに前を向く
平川怜。 (Photo by Thananuwat Srirasant/Getty Images)
今夏FC東京から完全移籍、チームの“大動脈”に。「その『あと少し』が、勝負の分かれ目に」
[J1参入PO 決勝] 京都 1-1 熊本/2022年11月13日13:05/サンガスタジアム by KYOCERA
J1参入プレーオフ(PO)決勝、ロアッソ熊本は京都サンガF.C.を相手にJ1昇格へ、あと一歩まで迫った。1-1で迎えた後半アディショナルタイム、平川怜の放った鮮烈のショットは無情にもポストを叩いた。あと数センチずれていれば……。試合後、勝利の女神の存在を問われた大木武監督は「今日はいなかったですね」と肩を落とした。
平川はトップ下として、この日ほとんどミスなくボールを収めて全方位へパスを散らし、プレスバックなど守備での数的優位を作り出す献身性も光った。攻守のリンクマン&フィニッシュにかかわるというチームの大動脈と言える役割を担い、チームに勢いをもたらしていった。
そして――最大のハイライトは後半アディショナルタイムの91分43秒から。GK佐藤優也も攻撃に加わるなか河原創の左コーナーキックから、ペナルティエリア内中央にいた平川の前へボールをこぼれる。平川の強烈な一本目のシュートは、ピーター・ウタカの顔面を直撃。再びボールがこぼれてくると、さらに狙い澄ました凄まじい右足のショットを放つ。しかし、ややアウトにかかったボールはポストを叩き、そのまま外へ逃げていってしまった。
「打った瞬間には、もうポストに当たっていました。その瞬間には、もう惜しかったと。本当にあとちょっとでした。強いシュートを枠に飛ばすことだけを考えました」
そう振り返った平川は、「最後の最後に自分のところにチャンスが来ましたが決め切れず、その『あと少し』のところが勝負の分かれ目になりました」と語り、決して運ではなく力不足だったと受け止めていた。
今シーズンの夏の移籍マーケットで、FC東京から熊本への完全移籍を決断した。年代別の日本代表にも選ばれてきた逸材でもあり、レンタルという立場ではなく「熊本の平川」として戦う覚悟を固めたことは、移籍市場でのサプライズの一つだった。
「最初のトレーニングから楽しい練習ばかりで、あっという間に充実した日々を過ごせました。(大木監督からは)90分間プレーすること、攻守にサボらないこと。当たり前のことを言われていますが、できている選手が少ないと感じています。そこがスタンダードになっていけるように努力していきたいです」
「ここまで来たのはクラブとして初めてでした。こうした舞台に立てたことで変わらないといけませんし、次は自動昇格を目指します」
そのようにロアッソカラーにしっかり染まり、熊本の選手としての自覚もすっかり板についていた。
大木監督は目の前の1試合だけを見ろと強調する。京都とのそこにあったわずかではあるが大きな差。いかに次は勝ち切るか――。22歳のミッドフィルダーはそこと徹底的に向き合っていた。
「自分たちのゲームになる時間も多かったので、全く力の差は感じていません。J1の厳しい舞台で、このチームでやりたかったです」
ファンとサポーターの熱い声援を背中に受けた平川は決してうなだれることなく、「またやるしかない、という気持ちになりました」と前を向いた。
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