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鳥栖の金明輝前監督、生々しいパワハラ行為。「前髪が長い」と平手打ち。殴る、はたく、蹴る、「殺す、死ね、消えろ」の暴言も常態化。「ユースの頃、月1回程度は暴力を受けていた」

鳥栖の金明輝前監督。写真:早草紀子/(C)Noriko HAYAKUSA

約100人から聴取、調査報告書にまとめられる。「たまに殴られたりしても、当たり前だと思っていた」

 サガン鳥栖の金明輝 前監督が常態的に暴力や暴言などパワハラ行為に及んでいた問題で、「サガン鳥栖に関する通報等に係る調査チーム」は12月30日に調査報告書(要約・公表版)を公開した。4人の弁護士による100人に及ぶ関係者からの聴き取りがまとめられたもので、そこには金氏による生々しい行為が報告されている。

 金氏はサガン鳥栖U-18の監督を務めていた2016年からトップチームを率いていた今季まで、ユース(高校生)またはトップチームの選手のプレーや態度に不満を覚えた際に激昂し、選手の至近距離で大きな声で叱責する、選手の胸ぐらをつかんで突き飛ばす、押し倒すといった言動を繰り返してきた。

 時には、選手を殴る、頭をはたく、蹴る、平手打ちをするといった行為に及んだ。

 以下の行為が複数の目撃により事実と認められた。

◎暴力行為
【トップチームの事案】
・2020年1月の練習時に金氏は、ある選手のパスが浮いているとして、「お前のパスはこうなんや」などと言って、徐々に距離を詰めて約7から8メートルの至近距離で、相当に強くボールを蹴り、2、3回、選手にぶつける行為に及んだ。

・金氏は、運転免許を取得していない若手選手に対し、他の選手の自動車への同乗ではなく自転車で練習場に通うよう命じていたところ。しかし2020年2、3月頃、そのルールに違反したと金氏が判断した一人の選手に対し、「おい」と胸ぐらをつかんだり、髪を引っ張ったり、足を強く蹴るなどした。

・2020年3、4月頃に行われた練習試合で、腰痛のためパフォーマンスが悪く前半で交代した選手に対し、金氏はチームベンチの横で「お前できると言っておいてこれは何なんだ」と言って胸ぐらをつかみ、同選手の胸を突き飛ばした。これを見ていたチームスタッフが間に入り、「手を出すのはダメだ」と言って制止した。

・2020年夏頃、ある選手の前髪が長いことに立腹した金氏は、同選手の前髪を握り、一発平手打ちをした。

・2021年、金氏はトレーナーのケアを受けていた選手の頭を平手ではたき、「ケアしてる場合ちゃうやろ」、「お前が冷やす権利あんのか」などと言った。

【ユースチームでの事案】
・複数のチーム関係者の証言により、金氏は鳥栖U-18の監督を務めていた時期、トップチームよりも頻繁に暴力・暴言に及んでいたことが認められる。

  今回の調査チームは、「ユースの試合が終わった後、ミスが多かった時、詰め寄られて胸ぐらをつかまれた。怖かった」「(ユースの頃からずっと暴言や暴行があったため)たまに殴られたりしても、当たり前のことだと思っていた」「ユースの頃は、月1回程度は暴力を受けていた」「拳骨で叩かれた。たんこぶができたこともあった」「平手で叩かれることもあった」といった証言を得ている。

 これらの証言は、供述内容の明確性や供述者の態度などにより、いずれも信用できるもの。金氏が鳥栖U-18の監督を務めていた時期、有形力の行使や暴言が常態化していたものと認められる。

 こうした言動の具体的な事例としては、以下の行為を挙げることができる。

 なお、トップチームの事案と同様、行為を受けた選手自身は必ずしも明確な証言をしていない件も含まれるが、いずれの行為も、複数のチーム関係者が目撃し、事実と認められる。

・2017年頃、金氏は試合終了後のミーティングの際、金氏の選手起用について意見を述べた選手の態度に激昂。「人としてその言い方はどうなんだ」と言いながら同選手を突き飛ばし、同選手は自動販売機にぶつかった。

・興奮した金氏はさらに手を出しかねない状況だったため、その場にいたチームスタッフが二人の間に入り、これを制止した。

・時期は不明だが、ユースチームの選手が学校でトラブルを起こした際、金氏は(そのトラブルと直接関係のない)先輩の3年生数名を呼び出し、「なぜ後輩を守ってやらないのか」と述べて、呼び出した全員に平手打ちをした。

 他にも金氏については、練習中に選手の胸ぐらをつかんで地面に押し付ける、寮生活で問題を起こした選手などを突き飛ばすといった行為が複数回あった。

◎ 暴言問題
【トップチームでの事案】
・2019年から2021年にかけて、金氏は練習、公式戦、全体ミーティングなど、他のチーム関係者もいる前で、主にユース出身や若手の選手に対し、「死ね」「だから○○(選手名)はダメなんだ」(全体ミーティングの際)「殺すぞ」「消えろ」「○○なんだからダメなんだよ、使えねーな」「グラウンドから出ていけ」「サッカーやめちまえ」「そんなプレーは小学生でもできる」「お前の顔は気持ち悪い」「アホ」「ボケ」「ハゲ」「おい、てめぇ」「俺の前に二度と姿を見せるな」などの発言に及んでいたことが認められる。

 金氏はそういった発言に及ぶ場合、選手に詰め寄り、至近距離から大声で叱責することが多かった。そのような叱責について、「怖かった」「圧を感じた」と述べるチーム関係者が複数いた。

【ユースチームでの事案】
・ユースチームでも、多くのチーム関係者が、「激しい言葉が多々あった」むねの証言をしている。「貴様、サッカー辞めろ」「死ね」「俺の前から消えろ」など、トップチームと同様の発言があったことが認められる。

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[文:サカノワ編集グループ]