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闘将マテウスがドイツ代表を冷静に批評「一見平和だが、血の気のない集団だった」。日本代表戦“魔の20分”にも言及

ドイツ戦で同点ゴールを決めた日本代表のMF堂安律。チームメイトが歓喜! (Photo by Stuart Franklin/Getty Images)

国内では賛否…フリック監督体制継続を「支持」する理由とは? 

 カタール・ワールドカップ(W杯)E組の3位に終わり、2大会連続でグループステージ敗退を喫したドイツ代表だが、ハンス=ディーター・フリック監督(Hans-Dieter “Hansi” Flick)の進退について、国内で賛否両論の議論が起きている。DFB(ドイツサッカー連盟)は続投させたい方針というが、正式な声明は発表されていない。

 そんななか元ドイツ代表キャプテンであり「闘将」として知られたローター・マテウス氏が12月3日、『ビルド』で今大会のドイツ代表について総括し、その冷静な内容が波紋を広げている。

 まずマテウス氏は、フリック体制の継続を支持している。就任から16か月しか経っておらず、その間に若い選手も台頭。「私は彼がここから良い未来へ導いてくれると確信している。ハンジは失敗から学ぶ自己批判力も備えている」と、この失望を必ずプラスに転換してくれると見ている。

 そして闘将は、DFB(ドイツサッカー連盟)の姿勢や今大会に向けた準備にこそ問題があったと指摘している。

 例えば、今大会の活動拠点として、ドーハから100キロ離れたペルシャ湾沿いのリゾート地を選択したこと。そこに家族・恋人が来るのを認めた日もあった。もちろん選手と監督・スタッフ、DFBの話し合いで決まったことだが、「選手の妻や家族があまりに早くカタールに来ていた。しかも選手全員が妻子持ちというわけでない。そこで小さなサークルを形成していった。ただ、むしろそれによる雑念があまりに多すぎた」と指摘する。

「DFBからは、チームはいつも平和で、楽しく、幸せであるように見えただろう。調和はフリックが大切にしてきたことだ。しかし、あまりにそこを重視しすぎた」

 そしてマテウス氏は、見た目の「平和」を取り繕うため、「私たちのチーム(ドイツ代表)は、血の気のない集団になっていった印象があった(まるで生き生きとしていなかった)」と、静かに怒りを漲らせる。

「アルゼンチン、ブラジル、そしてモロッコが、カタールで見せた情熱、チーム内の切磋琢磨に、むしろ恋しささえ感じた。彼らが一貫していたのは、国とチームのため、自分を犠牲にしていること。上手くいかない時はみんなを巻き込み本音をぶつけ合う。ファンも途方に暮れた。ドイツ人はあまりカタールに来なかった。DFBと代表チームは、他者の意見を受け入れずに接触を回避する、閉鎖的な小さなサークルになっていった」

 一連の人種差別問題などへの抗議活動もトピックスとして世界中で扱われた。ただ結局、“ピッチで勝つこと”にフォーカスしきれていなかったという象徴的な事象になってしまった。

 サッカー・ドイツ代表が、一体なんのために戦っているのか。その根源的な部分が、ないがしろにされていたのではないかと厳しく指摘している。

 一方、日本に敗れたのは“魔の20分間”の集中力の欠如とDFの個人的なミスであると言及。スペイン代表と1-1で引き分けたこともまた現在地であるとドイツ代表の背中を押している。そしてフリック監督がいろんな気遣いをせず、より明確なスタンスを示せる環境を作り、2024年の自国開催のEUROへ改めてチャンスを与えるべきだと主張している。

 四度の世界一の経験により、決勝まで見据えた「長期戦」では、前述のリゾート地のような人里離れた環境が重要だとDFBは考えた。より緊張度の増すノックアウトステージまで生き残ればその効果は発揮したのかもしれないが……。結果的にはマテウス氏の言うように“平和”や“楽しさ”が先に優先されて“闘う集団”になり切れず、フワッとした雰囲気に飲まれて敗れ去ってしまったと言える。

 マテウス氏の“フリック続投論”には賛否の意見が出ている。ただ、閉鎖的になりすぎて、「ドイツの選ばれし11人(ナツィオナル・エルフ)」の本質を見失っているのではないかというDFBへの批判には、多くの人が賛同している。

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